2017.10.11特集
日本各地から直送!四季折々の新鮮な食材が味わえる日本食レストラン5店
海外における日本食レストラン数は約89,000店(※1)にのぼり、ここタイでもその数は年々増え続け、現在2,774店(※2)を数えるという。赴任先の異国で、ここまで日本食が普及していることに驚いた人も多いのではないだろうか。 海外でも“日本と変わらない味”を可能にしているのは、日本から毎日のように空輸される日本産食材の存在に依るところが大きい。昨年、農林水産省は日本産食材の海外での需要拡大を図るため、「日本産食材サポーター店」制度を策定。海外で日本産食材を積極的に取り扱うレストラン・小売店を支援している。 今回は、バンコクでいち早く「日本産食材サポーター店」に申請・認定されたお店の中から5店を紹介。旬の食材を贅沢に使用し、日本酒とともに楽しめる、偽りのない日本の味を提供するお店ばかり。大切なお客様のおもてなしや、ふと故郷がなつかしくなった時にも、ぜひ足を運んでみてほしい。
※1)2015年7月時点/農林水産省の発表より ※2)2017年6月時点/JETROの発表より日本産食材サポーター店とは? 日本産食材を使った料理または日本産酒類を常に提供し、メニュー等で日本産食材・酒類の魅力をPRしている飲食店・小売店。農林水産省が定めたガイドラインに則り認定されたお店には、左の認定証が貼られる。
北大路バンコク
北海道産の蟹を使った会席コースが人気接待に特化した高級料亭ここでしか食べられない食材の数々
数寄屋造りの門の向こうに佇む料亭「北大路バンコク」は、東京都心に11店を構える創業80年の老舗・北大路がシンハービール(ブンロート・ブリュワリー社)と手を組んでオープン。コンセプトは、黒毛和牛と蟹をメインにした本格会席料理で、2,500~4,500バーツまで5種類の会席を用意。ほぼすべての料理に日本産食材が活用されており、料理に合わせて日本のお酒も種類豊富に揃う。料理、お酒ともに共通するのが、味はもちろん、食材のストーリーへの徹底したこだわりだ。ウニであれば、天然の昆布だけをエサにして育ち、その濃厚な甘みで定評のある岩手県洋野町のキタムラサキウニをタイで初めて提供した。このほか、日本でも手に入りづらいという京都牛や、6Lサイズの北海道のタラバ蟹など、他店ではほとんど見られないような希少な食材を積極的に仕入れている。お酒についても同様で、来日したオバマ大統領が寿司店で安倍首相と食事をしたときに提供された広島の「賀茂鶴ゴールド 大吟醸」、ノーベル賞授賞式でふるまわれた兵庫の銘酒「福寿 純米吟醸」など、話題性のあるアイテムを厳選。ストーリー性とブランド力を兼ね備えた食材の豊富さが「北大路バンコク」の真骨頂だ。年に4~5回、自治体と連携したイベントを実施。最近では、山梨フェスティバルで甲州和牛やシャインマスカット、ピオーネなどが好評を得た。「地方には良い食材が埋もれています。当店がアンテナショップ的な役割を果たし、良い食材を掘り起こしてブランド化に貢献していきたいですね」(料理長の村上岳志氏)。2号店の計画も進んでいる。お客さんの前で鱧落としを実演するなどエンターテイメント性を高め、日本産食材の新たな魅力に触れる場所になりそうだ。 甲州和牛A5しゃぶしゃぶ 6Lサイズのタラバ蟹TEL:061-387-3207
営業時間:月-金17:00-23:00 土-日11:30-15:00, 17:00-23:00 休み:なし 住所:212 Soi Thong Lo 8, Sukhmvit 55 Rd.
和食堂 山里
日本産の魚介を使用したにぎり寿司盛り合わせ5つ星ホテルの高級ダイニング日本各地から旬の食材を取り寄せ
眼下に広がる都心の絶景と正統派の和食を堪能できる「山里」は、国内外のVIPを魅了し続ける存在として、タイでもその名をとどろかせている。料理長の萩原繁氏は、グアムやシンガポールの「山里」立ち上げにも携わり、海外経験も豊富。「これまでの経験から、バンコクは特に日本産食材が入手しやすい環境だといえます。現在、提供するメニューで日本産食材が占める割合は8割。日本で朝締めした魚をその日の夜に届けてもらうことも可能です」(萩原氏)。名物の「にぎり寿司盛り合わせ」は、和歌山のマグロ、千葉の金目鯛、穴子は東京湾の江戸前で、うに、甘えび、帆立は北海道から。愛媛のシマアジに三陸のカレイほか、旬と産地を吟味したものばかり。木の芽や丸なす、みょうが、青唐辛子など、繊細さが持ち味の野菜類も日本から取り寄せている。「タイ産のみょうがもありますが、香りが強すぎたり、辛すぎたり。日本産の野菜は手間ひまの結晶だとつくづく感じます」。海外における「山里」のコンセプトは、“オーセンティック・ジャパニーズ”。「必ず、オークラ東京の味を知っている者が指揮を執り、大きくブレないことを基本にしています」と語るように、伝統のメニューがタイでも余すことなく再現される。主な客層は、日本人とタイ人でほぼ同率。「ヘルシーなイメージがすっかり定着し、日本食を深く理解する外国人も増えました。和食は素材の味がストレートに感じられる調理法だけに、ごまかしもきかない。重要なのは、素材の良し悪しを見極める目。そして、細やかな味付け。ここに和食の真骨頂があると考えています」。日本さながら、あるいはそれ以上の厳しい姿勢で、食材の魅力を実直に引き出すことを見据えている。 薩摩牛を使った牛大根炊き合わせ 胡麻豆腐TEL:02-687-9000
営業時間:朝食6:00-10:30 ランチ11:30-L.O.14:00 ディナー18:00-L.O.22:00(会席メニューはL.O.21:30) 休み:なし 住所:The Okura Prestige Bangkok Hotel, Park Ventures Ecoplex, 57 Wireless Rd.
鮨さくら川
左上:中トロ 右上:富山湾の一部でしか獲れない白海老 左下:のど黒昆布締め炙り 右下:天然しまあじ旬を見極めた天然物にこだわり磨かれた江戸前の技が光る銘店
寿司の名店ひしめくバンコク。その中でも、次世代を担う職人の一人と目されているのが、「鮨さくら川」の若き店主・駒田拓也氏だ。実家は福井県の寿司屋。18歳より職人を志し、修業を積んできた。「塩をあて、酢で締め、同じ魚でも“手当て”を施すと別ものになる。寿司の形になってより味わいが増すもの、意味あるものをもっと極めたいと思って」(駒田氏)。同店の特徴は、シャリに赤酢がきりりと香る正統派の江戸前。シャリの温度や握り方もネタごとに変化をつけ、うまさを引き出す努力を惜しまない。ネタは天然物にこだわり、ほぼすべての食材を日本産でまかなう。「やはり、えさの豊富な海を回遊した魚の、自然が作りだす味わいにはかないません。また、生食を前提にした場合、適切に締めて血抜きをし、はじめて高品質が保てる。活け締めの技術の高さも日本産を選ぶ理由です」。長崎対馬ののど黒昆布締め炙りは脂のりがよく、甘味とうま味たっぷり。富山湾の一部でしか漁獲されない白海老には徳島のスダチを絞っていただく。そのほか、明石の鯛、千葉銚子の金目鯛、長崎の剣先いか、宮城のまこがれい、淡路のキスと、滅多にお目にかかれない一流のネタばかりだ。仕入れは主に築地市場と大阪中央卸売市場から。「タイではもちろん、東南アジア全体で見ても、日本産の魚介類はブランド化しています。タイ人も銀座や金沢の名店まで足を運んでいる方が大勢いらっしゃいますし、もう日本人だから、タイ人だからは関係ない。今日はどんな魚を使って最高の寿司に仕上げるかに心を砕くだけです」。カウンターを挟んで、さながら寿司職人と客との真剣勝負。日本以上の味とクオリティを求める顧客の期待に応え続けている。 お昼に人気のばらちらし 徳島のすだちを絞ってTEL:02-661-7284
営業時間:火-金11:30-14:00, 17:00-22:00 土日11:30-15:00, 17:00-22:00 休み:月 住所:1F Jasmine City, Soi 23, Sukhumvit Rd.
北海道レストラン 原始焼き釜飯
北海道から直送の魚介を使った原始焼き5種盛り生産者から新鮮な食材を直接仕入れ海山の幸を味わう北海道ダイニング
スクンビットエリアで3店舗を経営する「原始焼き」グループ。北海道から直送される食材を活かしたメニューに定評があり、店内は常に活気が溢れている。「北海道のこだわりぬいた食材を低価格で。そして食材を通じて、北海道のことを知ってもらえれば」。エカマイにある「北海道レストラン原始焼き釜飯」の店長、藤本悠介氏が掲げるモットーは、メニュー表からも伝わってくる。「北海道厚岸産 大澤さんが育てた牡蠣」など、写真入りで地域生産者の顔と名前が添えられ、どこから来た魚介なのかも一目瞭然だ。扱う食材のうち、日本産が占める割合は約8割。名物は、店名の由来にもなっている「原始焼き」シリーズだ。新鮮な魚介や旬の食材を炉端で焼くので、遠赤外線効果で表面はパリッと香ばしく、中はふっくらしっとり、素材の持ち味を余すところなく堪能できる。日本近海産のサンマや九州からのブリカマ、鮎などが人気だそう。少量ずついろいろな味を楽しむ「原始焼き5種盛り」も好評だ。この日は、北海道直送の本メヌキ粕漬け、銀カレイ味醂漬け、ニシン塩麹漬け、ほっけ西京漬け、ソイ昆布醤油漬けの5種。また、肉厚で甘いと評判の「北海道産ほたての石鍋ガンガン焼き」は、北海道とほとんど変わらない価格で提供している。同店のもう一人の立役者は、料理長の寺島年隆氏。板前として活躍するだけでなく、栄養士養成学校の教員としても功績を残してきた。「今後は、北海道産の野菜の扱いを増やしたいと考えています。甘みとうま味がしっかりしたアスパラや大根、色鮮やかな紫じゃがいもなんかも取り入れていきたいですね」(寺島氏)。北海道の雄大な自然の恵みを日本と同じように楽しめる日が来るのもそう遠くなさそうだ。 北海道産ほたての石鍋ガンガン焼き ほっけ開きTEL:097-007-9416
営業時間:月-土17:00-23:30 日16:00-22:30 休み:なし 住所:15/1 Soi Ekkamai 12, Sukhumvit 63 Rd.
伊勢の國 サクラサク別館
千屋牛の溶岩焼きは遠赤外線効果で肉の旨みを引き出す料亭仕込みの味をバンコクへ酒通が集う日本居酒屋
懐かしい日本の味が味わえると在住日本人から高い支持を集める「伊勢の國 サクラサク別館」。メニューには、三重・岐阜の郷土料理のほか、珍味や創作ものまで多彩な料理が並ぶ。オーナーで板前歴30年の伊藤成浩氏は、三重の老舗料亭旅館で10年、しっかりと基礎から身につけた後、高級ゴルフクラブやホテルのレストランで経験を積んできた。 「うちは高級店ではありませんから、価格の範囲内で可能な限り日本の味に近づけることを目標にしています。とはいえ、自分がおいしいと思うものしか出したくないので、タイ人の味覚に寄せたアレンジは考えていません。妥協しない味で勝負しています」。そう語る伊藤氏入魂のメニューは、和牛の魅力を引き出す「溶岩焼き」と「和牛たたき」。使用するのは、岡山が誇る千屋牛だ。もう一品は日本のソウルフード「おでん」。練り物だけでなく、大根も日本から取り寄せている。「土壌が違うので仕方ないですが、タイの大根は固くて火が通りにくい。出汁が染み、箸がすっと入るよう仕上げるには、日本産がいちばんです」。実は伊藤氏、12年前にもバンコクの日本料理店に勤めている。「当時は日本産食材が手に入りづらく、歯がゆい思いをしたものです。今は、魚介の9割以上が日本から直送。時期のものや地方の名産品には特に力を入れています」。また、同店を特徴づけるのがお酒の品揃えだ。日本酒は80種類、焼酎は60種類が揃う。「お客さんのリクエストに近い味のものを出したい。どうせなら出身地の銘柄も揃えてあげたい。そう思ったらこれだけの数になりました」と伊藤氏。日本の味に杯を傾けつつ、寛いだ時間を過ごす。ここは故郷から遠く離れて暮らすビジネスマンたちのオアシスとなっている。 和牛たたき おでんTEL:02-662-3662
営業時間:17:30-1:00 休み:不定休 住所:9/15-18 Soi 33, Sukhumvit Rd.