にく処 鈴㐂(すずき)のこだわり
プロンポン駅にほど近い路地裏に建つ、こぢんまりとした、しかしタダ者ではないオーラを漂わせているこちらのお店。そっと扉を開けると、落ち着きの中にもセンスが光る空間が広がっている。柔和な笑顔で出迎えてくれたのは、鈴木基弘さん。アメリカの有名店にサービスの真髄を学び、シンガポール勤務時代にはレストラン・ホテルの格付け本でトップサービスマンの称号を獲得した、プロのサービスマンだ。カウンターの中で手際よく仕事をこなすのは、シェフの鈴木祥広さん。老舗料亭からキャリアをスタートさせ、アメリカ、フランスの星付きレストランで腕を磨いた、こちらもプロ中のプロ。世界で経験を積んだ兄弟がタッグを組み、ここバンコクでは奥深く、魅惑的な肉の世界にいざなってくれる。
要となる食材は、農家から直接仕入れる近江牛。日本最古のブランド牛だけに、きめ細やかな肉質に、舌の上ですうっと溶ける甘い脂、淡白な中にも旨みをたたえた赤身肉など、そのバランスの良さもお見事。近江牛を中心に旬の野菜や海鮮もまじえながら、和食を軸に驚きあり感動ありの、多様性あふれるフュージョン料理へと昇華させる。
フランス人がこよなく愛する本場のホワイトアスパラガスを取り寄せて
メニューを追うだけでワクワクが止まらないが、まずは「フランス産アスパラガスの霜降り肉巻き」(680B)を。甘くほろ苦いアスパラガスは、旨みたっぷりの肉で包んでさっと炙れば、外側は香ばしく、中はトロリ。口の中でほどけていく上質な脂も、スモーキーな炭火の香りも嬉しい、五感が喜ぶ一皿。ぜひご注文を。
フランス伝統料理のタルタルを近江牛で贅沢に。自家製ポン酢の清涼感も◎
こちらは店のスペシャリテの一つ、「近江牛のタルタル」(680B)。生食でも抜群に美味しい赤身を丁寧に刻んだ、いわばフランス版ユッケ。まず驚くのはその繊細な口当たり。スプーンを入れて肉を崩すと、泡状のポン酢がふわりと香り立ち、さらなる高みに押しあげてくれる。
パンチある肉の風味にクリーミーな牡蠣が調和する、巧緻を極めた一皿
「近江牛と牡蠣のタルタル仕立て」(一貫320B)にも腕の確かさがにじむ。肉だけが持つ力強い味、それを追いかける海の豊かな香り、食材へのリスペクトも垣間見えながら、陸と海、どちらの魅力も存分に引き出している。柚子の香るポン酢ジュレを絡めればパーフェクトな旨さ!
1階はライブキッチンを臨むカウンター、2階は半個室と完全個室で構成された大人の空間
それら美食をさらに引き立てるのは、サービスの質の高さだ。声かけのタイミング、素材や料理法についての知識、所作の美しさ、見えない部分も含めて「ゲストが楽しい時間を過ごせるように」とあらゆる面で心を砕く。料理と酒のペアリングもプロが提案してくれるので気楽に相談してみたい。
肉によく合う銘酒も豊富で、選りすぐりのワインを筆頭に、Lagavulin16年などレアなウィスキーもラインナップ。かと思えばジャンクなカクテルがひょいと顔を覗かせたりもして、遊び心も満載だ。土日限定のコースランチも間もなくスタートとのことで、こちらも実に楽しみ。